政府がCO2削減量目標を上方修正〜企業に影響することと指針予測

政府がCO2削減量を上方修正〜企業に影響することと指針予測
2020年10月26日の所信表明演説で「2050年カーボン・オフセット」を宣言した菅義偉首相。その後2021年4月22日には、地球温暖化対策本部において「2030年までの温室効果ガス削減目標」を当初の26%から20%上方修正し、「2030年までに2013年比で46%削減」すると発表しました。 この上方修正分のみならず、46%という数字をどの業界で、どのように達成していくのか。各企業はどのような負担が求められるのか、この記事で分析したいと思います。

この記事の要点

  • 政府目標の上方修正の理由
  • CO2削減のためにするべきこと
  • 企業としての対応
  • 削減活動から得られるもの

なぜ20%も上乗せしたのか

COP25で採択された「パリ協定」の数値から、なぜ20%も上方修正したのか。そこに疑問をお持ちの方も多いと思います。実はその根拠は単純明快で、首相の所信表明演説で宣言した「2050年カーボン・オフセット」を達成するためには、2030年度に46%削減していないと難しいからです。

とはいえ、菅首相の面目躍如のための上方修正ではありません。2013年度の削減率と2050年のカーボン・オフセットの数値を直線で結ぶと、2030年時点で26%だと、あとの20年で急激に施策を進めなければならないことが判明したのです。言い換えればパリ協定時点の26%という数字が甘かったということになります。

26%という数字は各省庁が、関係業界団体と折衝をして削減できるであろうCO2の量を取りまとめ、目標達成率を決めていました。つまり「2030年までにどれだけ減らせますか?」という前提で決められたのが下表のような配分から26%という数字だったのです。

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分野 2013年度実績 2030年排出量の目安 削減率
エネルギー起源CO2 1,235 927 24.94%
内訳 産業部門 429 401 6.53%
業務その他部門 279 168 39.78%
家庭部門 201 122 39.30%
運輸部門 225 163 27.56%
エネルギー転換部門(発電) 101 73 27.72%
非エネルギー起源 CO2 75.9 70.8 6.72%
メタン 36 31.6 12.22%
一酸化二窒素 22.5 21.1 6.22%
代替えフロンなど 38.6 28.9 25.13%
温室効果ガス吸収源 0 37
合計 1408.00 1116.40 20.71%

日本の進捗を監視するのは世界の目

世界、特に欧州各国や中国が高い目標を掲げる中、日本は弱気な数字であることに、政府は危機感を覚えたに違いありません。「2050年カーボン・オフセット宣言」は、2030年の削減率是正のための布石だった可能性すらあります。

霞が関主導だったCO2削減が政府主導に変わり、さらに高い目標値が降ってきたことに、反発する業界もあったでしょう。しかし「2050年カーボン・オフセット宣言」が先にあったことから、世界の耳目を集めてしまっている以上、各企業とくにグローバル企業は動かざるをえなくなりました。

目標達成の要になるのはやはり発電

上述の26%目標時の想定表で大きな割合を占めている「エネルギー転換部門」が大きな課題です。

現状ではCO2排出量の多い火力発電が主流でですが、資源エネルギー庁が公布している資料によれば、日本においては現行の再生可能エネルギー電源の電力供給量が約2倍ものポテンシャルがあるとしています。そのポテンシャルを実績化しつつ、非化石電源の比率を最大化するとしています。

非化石電源とは

化石燃料を使用しない発電方法を用いた発電所を指す。太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギー発電と、原子力発電を合わせ非化石電源と呼ぶ。

さらに与党である自民党の「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(会長:柴山昌彦衆議院議員)」は、再生可能エネルギーの比率を2030年に45%以上にする提言を採択、経済産業省では脱炭素電源を6割(再生可能エネルギーは30%後半、原子力を20%程度、残りを水素やアンモニア利用)に大幅に引き上げることを検討してると報道されました。

企業に求められる対応

上積みされた20%はパーセンテージで表すとあまり大きな数字に感じませんが、CO2排出量に換算すると、全全勝約11億トンCO2と凄まじい量になります。企業の業種や大小に関わらず、あらゆるところで温室効果ガス排出削減を求められることでしょう。

けれども、計画や実行、資金の調達などフローに時間がかかる企業では、政府から具体策が示されてから対応しても間に合わない可能性が高くなります。そのような場合は、政府指針などに則した、再生可能エネルギー由来の自社電源の確保など、早急に検討するできです。

省エネルギー対策の観点からであれば、大きな比重を占めている家庭からのCO2排出の抑制が考えられます。建設・住宅・住設業界に関わることであれば、オール電化住宅の促進やZEH、ZEBの普及など、省エネ対策をする建築物や設備を市場に送り出すことでCO2削減に貢献することが出来ます。

CO2排出力に無頓着な企業は脱落していく

2030年までに46%削減する目標が提示されてから、あらゆる業界で動き出しています。大手メーカーがサプライチェーンに対し、CO2削減目標の提示や再生可能エネルギーの導入を求める動きがそこかしこで見られるようになりました。

金融機関でも動きが見られます。大手3行は石炭火力発電所に対する投融資を中止し、融資に関しても回収する動きを見せています。逆にESG投資の名目商品を拡充している様相です。

今後10年でタイムリミットが迫れば迫るほど、より厳しく結果を求められるでしょう。政府では、カーボンプライシング制度(簡単に言えばCO2排出に対する費用負担)導入も検討段階に入りました。

これから先、国内のどの企業に対しても、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー施策の対応が求められます。すでに社会的に議論する段階を過ぎて、市場として醸成されてきました。様子見して過ごしていると、あれよあれよというまにマーケットから脱落してしまいます。

CO2削減をチャンスに切り替える

まだ対応していない企業の担当者は早急に動きましょう。どのような仕様のものを導入するにせよ、不動産がかかわる業界であれば、エネルギー問題と絡めてZEHやZEB、GB認証などを取得して、CO2削減と同時に企業価値を高めることが可能です。

政府の目標値に対する姿勢が受動的なのか能動的なのかで、今後の企業としての成長と、競合他社との格差が決まります。ぜひここは能動的に攻めの姿勢で挑んでいくことをおすすめします。

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